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独占欲に捕らわれて
第6章 契約期間開始
「千聖さんはきっと、紅玲を誤解してると思って。そりゃアイツはトリッキーでなに考えてるのか、付き合いが長い僕でも分からないさ。でもね、女性を誑かして遊ぼうなんて腐った考えはしない。それだけは分かって欲しいんだ」
斗真は真剣な目で、千聖を見つめる。
「そうみたいね。あなたみたいな友達思いがいるくらいだもの」
千聖が柔らかく微笑んで言うと、斗真は安堵の表情を浮かべた。
「理解してくれてなによりだよ。詳しい事情は知らないけど、嫌々紅玲といるって聞いたから、心配になってね」
「ちょっと、それってどこ情報よ?」
千聖はジョッキを傾ける手を止めて、斗真をまじまじと見る。

「紅玲本人さ。少なくとも1ヶ月は、君といられる口実が出来たって。律儀に嫌々付き合ってくれてるとも言っていたよ」
「そう……」
千聖はそれだけ答えると、グラスをカラにした。店員を呼び止め、泡盛を注文する。

「千聖さんに紅玲の彼女になれなんて言わない。けど、その1ヶ月は、ちゃんと紅玲と向き合ってほしいんだ……」
「善処はするわ」
「それでいい。……さて、この話は終わりにしようか」
斗真は通りかかった店員に声をかけると、今度は日本酒を注文した。
それからふたりは、他愛のない話をしながら酒を楽しんだ。歳の近いふたりは職場の愚痴やニュースの話で盛り上がり、お互いに気分がいい状態で解散した。
あの後、斗真が一切紅玲の話をしなかったため、千聖は久しぶりに同年代の人と楽しむことが出来た。

千聖は帰宅すると、シャワーを浴びてベッドに潜り込む。ふと、斗真から聞いた話を思い出す。
「アイツも、大変だったんだな……」
同情と似て非なる感情と共に、千聖の中で疑問が生じる。

「あれだけ酷い目にあったのに、どうして私に言い寄るんだろ?」
斗真の話を聞きながら、千聖は自分が紅玲の立場だったら、きっと立ち直れないと考えていた。せっかく差し伸べられた救いの手すら、彼を裏切ったのだ。女性を見るだけで嫌悪するほどになってもおかしくない。
「本当に、変なヤツ……」
千聖が呟くと、LINEの通知音が鳴った。確認してみれば、紅玲からだ。

“夜遅くにごめんね? 金曜日の夜空いてる?”
ちょうどいい機会だと思った千聖は、空いていると返信すると、眠りについた。
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