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独占欲に捕らわれて
第6章 契約期間開始
翌朝、アラームで起きたついでにLINEを確認すると、紅玲から返信が来ている。
“夜中なのに返信ありがと。一緒にごはんでもどう? 食べたいものがあれば、お店探しておくから言ってね。待ち合わせは6時頃で大丈夫?”
律儀な上に完璧といっていいほどの気遣いに、千聖はますます彼が分からなくなる。
「長い付き合いのある斗真でも、トリッキーで理解できないって言ってたしね……」
千聖は“じゃあ6時に駅前で。和食が食べたいかも”と返信すると、出勤の準備をした。

出社して淡々と仕事をこなし、10時休憩。後輩とカップ自販機のカフェラテを飲みながら、雑談を楽しむ。
「明日は彼が会社まで迎えに来てくれるって言うんですよ。記念日デート行こうって約束したんです」
「それはよかったわね。デートもいいけど、仕事もしっかりね」
千聖は恋する後輩を微笑ましく思いながらも、しっかりと釘を刺す。

「分かってますよ。千聖先輩は彼氏作んないんですか? すっごく美人だし、モテるでしょ?」
「んー……自分の恋愛となると興味無いのよね。あなたの話聞いてるだけで充分よ」
千聖が手を合わせてご馳走様というと、後輩は顔を赤くしながらはにかんだ。
「でも私、先輩には幸せになって欲しいんです。先輩はできる女だから、恋に興味無いかもですけど……。しっかりしてる人だからこそ、甘えられる人を作ってほしいなぁ、なんて。すいません、余計なお世話ですよね」
「ううん、そんなことないわ。幸せを願ってくれてありがとう」
千聖が礼を言うと、休憩終わり5分前のチャイムが鳴る。

「あ、戻らないと」
「そうね」
後輩とオフィスに戻りながら、先程の会話を脳内で繰り返す。
(甘えられる人、ね……)
義和の顔を思い浮かべるが、彼は妻子持ちだ。ふと、紅玲の顔が過ぎる。
(ないない)
千聖は内心鼻で笑いながら否定すると、仕事に打ち込んだ。

昼休憩、食堂でハンバーグ定食を食べながらスマホを見ると、紅玲からLINEが来ていた。
“来てくれるんだね、ありがと。和食だね、気が変わったら遠慮なく言ってね”
(律儀っていうか、低姿勢……。これじゃあ召使いみたいじゃない……。まぁ、あんなことあったら、仕方ないのかな……?)
千聖は返信せずにスマホをしまうと、食事を始めた。
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