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独占欲に捕らわれて
第6章 契約期間開始
そばを食べ終えた紅玲は、再びメニュー表を開く。
「んー……この前は白玉食べたから……。和栗あんみつにしよっかな。チサちゃんは?」
「そんなに入りそうにないから、黒蜜きなこのバニラアイスにするわ」
「オーケー、黒蜜きなこのバニラね」
紅玲は呼び出しボタンを押すと、店員にデザートの注文をした。

「さてと、取材の続きはデザートが来てからでいいかな?」
「えぇ、いいわよ。ところでOLを主人公にしたものをって言ってたけど、具体的にはどんなのを書く予定なの?」
「もしかして、オレの仕事に興味持ってくれてる?」
千聖に質問されると、紅玲は目を輝かせる。
「想像つかない仕事だもの」

「そっかぁ。今回のは御局様的存在のOLが、イマドキの若い新入社員に恋をする話だよ」
「へぇ、なんだかくっつきそうにないふたりね」
「うん、正直オレもそう思う」
率直な感想に同意する紅玲を、千聖は不思議そうに見る。
「書く人がそんなこと言っていいの?」
「事実だからね。まずは自分の感情に素直にならないと。それから不可能を可能にしていくルートを探す。依頼された物語を作るって、そんな感じかな」
紅玲は穏やかに語る。

「好きなのね、シナリオライターの仕事が」
「うん、まぁね。正直、こっちの収入は月に数万円程度なんだ。でも、本気で打ち込める仕事は、これくらいだから」
(ホント、楽しそうに話しちゃって……)
やりがいのあるものを持っている紅玲が、少しだけ羨ましくなる。

「おまたせしました、黒蜜きなこアイスと和栗あんみつです」
店員はそれぞれの前にデザートとふたつの湯のみを置くと、にこやかに去っていく。
「これは?」
千聖は湯のみをのぞき込む。中には茶色の飲み物が入っている。
「ほうじ茶だよ。ここはデザートを頼むと、あったかいほうじ茶をくれるんだよ」
紅玲は説明すると、和栗をひとつすくった。

「チサちゃん、栗は好き?」
「えぇ、好きよ」
「ひとつあげる」
紅玲は千聖が返事をする前に、和栗をバニラアイスに添えた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
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