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独占欲に捕らわれて
第7章 苦悩
その頃紅玲は大量の本とパソコンだけの部屋で、千聖から聞いた話を参考に物語を書いていた。一通り書き終わり、あとは読み返して誤字脱字などを確認するだけとなる。
「つっかれたぁ~」
紅玲は立ち上がって伸びをすると、寝室へ行ってベッドに寝転がる。

「今日はもう、いいや……。それにしても、トーマはどこまで話したんだろ?」
和食店での千聖との会話を思い返しながら、ポツリと呟く。斗真のことだから自分を貶めるようなことは言ってないと分かってはいても、自分の過去はあまり知られたくなかった。特に、千聖には。

「あー……でも、チサちゃんは優しいから、少しはオレのこと見てくれるようになるかな? そうだったらいいんだけどねぇ」
小さく苦笑すると、大学時代にかけられた言葉を思い出した。
『アンタの運命の人は、きっとアンタを毛嫌いするよ。そういう人でなきゃ、本当にアンタのことを愛してくれない。そんな気がする』
それは講義で偶然隣の席になった、占いサークルの部長の言葉だ。占いにはまったく興味がなかった紅玲だが、この言葉だけは信じてみようと思えた。

「顔も名前も覚えてないけど、あの子がチサちゃんを見たら、なんて言うんだろ?」
自分に嫌悪の目を向ける千聖を思い出しながら、紅玲は口角を上げる。

紅玲が歪な幸せに浸っていると、スマホが震えた。どうやら着信らしく、バイブレーションは連続して唸る。ちらりと画面を見れば、見たくない名前が浮かび上がり、紅玲の眉間に皺が寄る。
夜更けだというのに相手はなかなか諦めないらしく、静かな部屋には振動音が響く。
名前が消えると紅玲は大きく息を吐き、自分が息を止めていたことに気づいた。

「決別しなきゃって分かってるんだけどねぇ……。オレが愛してるのは、チサちゃんだけなのに……」
目を伏せながら言うと紅玲はスマホの電源を切って、目を閉じた。
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