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独占欲に捕らわれて
第7章 苦悩
紅玲は部屋を見つけるとドアを開け、千聖に先に入るように促す。部屋に入ると、ワインレッドの絨毯が真っ先に目に入る。絨毯以外はホワイトベージュで統一されていて、天井にはシャンデリアがある。一言で言えば、中世ヨーロッパ風の部屋だ。
「うわぁ、すごい部屋だね」
後から入ってきた紅玲は、キョロキョロと部屋を見回す。

「このホテルはなにがしたいの……」
「確か、“非日常溢れる愛を”ってコンセプトでやってると思ったよ」
「なるほどね……。とりあえず、お風呂沸かしてくるわ……」
千聖はカバンをソファに置くと、浴室へ行く。

「凝ってるわね……」
千聖は浴室を見回しながら、しみじみと言う。浴槽は金の足で支えられた猫足バスタブ、タイルは青と白が交互に並び、青いタイルには等間隔で紋章のようなものが、金色で書かれている。
「これって、自分で調整しなきゃよね……」
千聖は蛇口をひねりながら、疑問を口にする。

部屋に戻ると、紅玲はソファの上でくつろいでいる。
「お風呂、どうだった?」
「特殊なお風呂だったわ……。4つの足に支えられてる、ヨーロッパにありそうなお風呂よ」
千聖が言い終わると、紅玲は珍しく大声を上げて笑う。

「なにそれ、もしかして猫足バスタブってやつ? だとしたら、ここも随分頑張るねぇ」
「名称は知らないわよ。見てくれば?」
「うん、そうしてみるよ」
よほど気になるのか、紅玲は大股で歩いて浴室へ行く。千聖は上機嫌な紅玲の後ろ姿を見ながら、首を傾げる。
「なにがそんなにおかしいのかしら?」

紅玲はすぐに、クスクス笑いながら戻ってきた。
「うん、猫足バスタブだった」
「なにがそんなにおかしいの?」
「前に中世ヨーロッパを舞台にした話を書いたことがあってね。その時に猫足バスタブの存在知ったんだけど、日本でやると大変なんだよ。まず、気候が違うからね」
「気候とお風呂に、なんの関係があるの?」
興味を持った千聖は、紅玲の隣に座りながら聞く。
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