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独占欲に捕らわれて
第7章 苦悩
「ねぇ、またオレの話聞いてくれる?」
「辛いんじゃないの? 無理に話さなくてもいいわ」
「ううん、整理するためにも話したいんだ。何より、チサちゃんには知って欲しくて……」
紅玲は千聖の背中に、冷たい頬を擦り寄せた。
「そういうことなら、聞かせてちょうだい」
「ありがとう、チサちゃん」
紅玲は千聖のうなじにキスを落とした。

「実はここ最近、ミチルから連絡が来てたんだ……」
「なんて?」
「お金のことは感謝してる、とか、あの時酷いこと言って振ったのは、愛を確かめるためだ、とかね……。でもそんなのは、嘘に決まってる。父さん同様、お金に困ってたか、遊ぶお金が欲しかったか……」
千聖を抱きしめる腕に、力が込められる。

「そんな人、はやく連絡先ブロックして消しちゃえばいいのに」
「頭では分かっていても、それがなかなか出来なくてね……」
自嘲気味に言う紅玲の言葉が、千聖の胸に突き刺さる。

「それは……、まだミチルさんが好きだから?」
「まさか。オレが愛してるのは、チサちゃんだけ。今更ミチルに愛着なんかないよ」
「じゃあ、なんでよ?」
つい感情的になり、責め立てるような口調になってしまう。

「当時のオレは、斗真ですら近づきがたいと思うほどひどい状態だった……。そんなオレに話しかけてくれたのは、ミチルだけだったんだ。いくらオレが拒んでもそばにいて、オレの彼女だって思い込んでる子達を言い負かしたりして追い払ってくれて……。何より、一緒にいてすごく楽しかったんだ。それが全部、お金のためだなんて思いたくなかった……」
「紅玲……」
千聖が紅玲の腕に触れると、彼はその手を強く握る。

「でも、今日会って踏ん切りがついた。やっぱりミチルは、オレを金づるだとしか思ってないって、よく分かった……」
「さぞかし、辛いでしょうね……」
月並みの言葉しか出ない自分の語彙力を恨みながら、言葉を返す。
「それがね、自分でも驚くくらい、そのことに関してのショックは少ないんだ。1日で父さんとミチルに会ってさ、“あぁ、オレには金を稼ぐしか取り柄がないんだな”って思っちゃって……」
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