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ひと夏の恋……そして……
第1章 進みだした時間

「真和は……パパがいなくてさみしい?」

「……さみしくないよ。だって僕にはなつ兄ちゃんがいるもん」

私の言葉に一瞬戸惑い、それでも次の瞬間には満面な笑顔で答えてくれた。
それが私を気遣っての言葉だと分かっている。
幼いながらにも父親のことは聞いてはダメだと心得ている。

「そっか、なつ兄ちゃんがいるから平気か」

「うん!なつ兄ちゃんがいれば僕さみしくないよ」

そういいながら、私のTシャツを握りしめて笑う。
どこまでも真和には我慢ばかりさせている。
父親のこともそうだけど、仕事が忙しいと日中は一緒に遊んではあげられない。
だけど仕事をしないと真和を育てていくこともできない。

「ママ、僕は平気だよ。だから、そんな顔しないで?」

考え事をしている私にしがみついてくる真和に愛おしさがこみあげてくる。
何があっても真和を生んだことだけは後悔はしていない。
どんなに苦しくても大変でも、真和は私の生きる糧。

「ありがとう。真和がそばにいるだけでママは幸せだよ」

「うん。僕もママがいれば幸せだよ。」


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