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ひと夏の恋……そして……
第11章 甦る記憶と共に
「おはようございます」
いつものようにお店のキッチンで朝食の準備をしていると、寝起き姿の佐伯さんが店の2階から降りてきた。
「あっ、すいません。うるさかったですか?」
いつもお店のキッチンで朝食の準備をしているから、いつものように音を立てていたことに気が付いて謝れば、寝起きのはずなのに爽やかな笑顔を私に向ける。
「いえ、大丈夫ですよ。一人暮らしの男にしたら朝から包丁の音で目が覚めるのは理想的ですので」
ウインクをして意味深なことを言いものだから朝からドキドキして心臓に悪い。
和泉との事を鮮明に思い出してしまったから余計に佐伯さんを意識してしまいそうだった。
そんな佐伯さんはカウンターに座り頬杖をついて私の手元を見ては楽しそうに微笑んでいた。
そんなにマジマジと見つめられると手元が狂っていつものように軽快に小ねぎを切ることができずに苦笑いする。
それでも佐伯さんが目の前にいることで、もしあのまま和泉が傍にいてくれたらこんな毎日が訪れていたのかもしれないと、考えても仕方がないことが頭の片隅をよぎっては消えていく。
それだけ佐伯さんは和泉に似ているし、微笑んだ時に出来るエクボは真和と同じだった。