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ひと夏の恋……そして……
第11章 甦る記憶と共に

「昨晩はよく眠れましたか?窓を開けても扇風機だけでは暑くなかったですか?」

「ぐっすりと眠ることができましたよ。夜になると意外と涼しいんですね。驚きました」

「そうですね。8月も半ばですからね。徐々に涼しくなって人も少なくなってさみしくなりますよ」

そう言葉にしながら、今年の夏も終わりに近づいていることを実感した。
今年こそはと願っていた和泉との再会……と言っていいのか分からないけど、見れば見るほど和泉だと思う。
だけど、和泉と違うところは色白ではないところだった。
夏樹のように小麦色に日焼けしているわけではないけど、健康的な肌色は和泉ではない。
そう考えると、やっぱり佐伯さんは和泉ではなくて、ただの他人の空似ということになる。

「私の顔に何かついていますか?」

「えっ?あっ……いえ」

ジッと佐伯さんを見ながら和泉の事を考えていた私は、佐伯さんの言葉に慌てて視線を外した。
そんな私をクスクスと笑い、それ以上の事を言われることはなかった。


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