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ひと夏の恋……そして……
第12章 成長とやさしさ
「今年は本当に暑いよね。ソンちゃんも身体、気を付けてよ」
「誰に向かって口を聞いているのさ。このソンちゃんが倒れるはずがないだろう」
腰に手を当てて、さも当然のように言葉にする。
昔から変わらないこのバイタリティー。
だけど、どんなに元気でも60歳を超えているソンちゃんを心配するのは子供である私の役目。
「分かってるけどね。それでも心配になるよ。ソンちゃんに倒れられたらこの店やっていけないんだから」
「うれしい事言ってくれるね~。でも大丈夫さ!真和が成人するまでは現役で頑張らないとね。」
「成人って、あと15年もあるよ」
「何言ってるんだい。15年なんてアッと言う間さ。ママ、ママってかわいいのも今のうち、そのうち近寄りもしなくなるんだから。手塩にかけて育てたって嫁ができれば嫁が一番で、母親は見捨てられるのさ」
ソンちゃんはケタケタ笑いながら厨房の片づけを始めた。
その笑顔の下にある寂しさを考えると胸が痛くなる。