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ひと夏の恋……そして……
第15章 私が下した決断
「ここですか?」
「はい。今は普通の風景ですけど、あと少しすれば一気に雰囲気が変わるはずです」
久しぶりに降り立った浜辺は5年前と変わってはいなかった。
変わったのは人の心だけで風景は変わらない。
それが良く分かる。
それは時の流れで、人の心が変わるには十分な年月だった。
「そうなんですね。この風景がどう変わって行くのか楽しみです」
明るいうちは何の変哲もない砂浜でも、夕日が沈みだすと一気に変わる。
初めて夏樹に連れてきてもらった時は感動して何も言葉にできなかったことを覚えている。
そして、黙って私の話を聞いてくれた。
あの時、夏樹と出会っていなければ今の私はいないと思う。
それほどまでに夏樹との出会いは私の人生を変えた。
「陽が沈むまで時間がありますから座って待っていましょうか」
太陽が沈むまで30分程はあるだろうと思い、近くに流れ着いている流木に座った。
目と閉じると波の音が静かに流れ込んでくる。
その音を聞きながら、大きく深呼吸をした――