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ひと夏の恋……そして……
第16章 すれ違う気持ち
それは突然の出来事だった。
佐伯さんと帰ろうと駐車場に足を向けた時、目の前に人影が現れた。
他にも夜空を見に来た人がいたのかと思っていると、その人影は何も言わずに佐伯さんに殴りかかっていた。
それはスローモーションのように目の前で繰り広げられ、一瞬、何が起きたのかわからず、ドサッと佐伯さんが砂の上に倒れこむまで身体が動かなかった。
いや……今でも身体が動かない。
すべての音が私の中から消えてしまったかのように、とても静かだった……
「今更、何して来てんだ!」
その怒りに満ちた声が耳に届いた瞬間、一気にすべての音が流れ込んでくる。
ザパーンと打ち寄せる波の音、秋らしい虫の音色、そして街道を行きかう車の音と共に、夏樹の低い声が響き渡った。
夏樹は佐伯さんの胸ぐらをつかみながら尚も低い声をぶつける。
「どれだけ真緒がお前を待ってたと思うんだ!えっ?!急に何も言わずに姿を消しやがって……今更、どの面下げてこの島に来てんだ!!」