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ひと夏の恋……そして……
第16章 すれ違う気持ち
「電話で話したよね。リゾート開発を引き継いだ佐伯コーポレーションの副社長さんが挨拶に来てくれたって。彼がその副社長の佐伯千春さん」
「はっ?まだ言い訳を続ける気か?」
「言い訳じゃない!信じられないなら西条さんに連絡してみてよ。西条さんも佐伯さんと一緒にあいさつにきたんだから!!」
西条さんの名前を出せば、夏樹は佐伯さんの顔を直視する。
夏樹も西条さんとは何度も会っているから誤解が解けるはずだと祈るように見守った。
「和泉……じゃないのか?」
少し困惑したような表情で私を振り返った。
そこには怒りに満ちた夏樹はいない。
「こんなことで嘘つくはずないよ。私も最初は驚いたけど、まったくの別人だよ。だから大丈夫。その手を離して」
和泉と佐伯さんが同一人物じゃないと理解してくれたのか、佐伯さんを離して力が抜けたように砂浜に座り込んだ。
もう大丈夫だと思った私は、夏樹の背中をポンポンと軽く叩いて、佐伯さんの側に移動した。