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ひと夏の恋……そして……
第19章 好きなら奪って
「真和?用意できてるか?でかけるぞ」
「あっ!なつ兄ちゃんだ!」
勝手口から夏樹の声が聞こえると、お絵描きをしていたクレヨンを放りだし夏樹の元にかけより抱きついていた。
その真和を抱き上げた夏樹は、真和にだけは笑顔を見せる。
「いつもごめんね」
私が近づき声をかけると、夏樹は笑顔を消し、真和から見られないように真和の頭を肩に寄せた。
「いいや、真和に泣かれるのは俺も弱いからな、これくらいで笑ってくれるなら会いにくるさ……じゃあ、2時間ぐらいしたら戻ってくるから」
「あっ、待って」
出ていこうとする夏樹を咄嗟に止めてしまう。
止めたからと言って何かを言いたいわけじゃない。
ただ、もう少し一緒にいたくて声をかけていた。
そう思うのは私だけで夏樹はそうは思わない。
「……ごめん、まだ俺、気持ちの整理ついてないから……」
私の握っている手を離し、夏樹は真和と一緒に出掛けていった。