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ひと夏の恋……そして……
第19章 好きなら奪って

「私は、それなりの力を得ました。ある程度の事だったら何でも思い通りにできるんです。だから、あなたを悲しませるようなことは決してない。私の全てであなたを守ります。ですから、私を好きになってください」

正直、佐伯さんからの好意を感じなかったわけじゃない。
一緒に過ごし惹かれる部分も少なからずあったのは確か。
だけど、それだけ。
それ以上の感情を佐伯さんに持ったことはない。
これからもそれは変わらない。
私の心の中にあるのはいつだって夏樹への想いだけで、佐伯さんがどんな言葉を紡ごうと今の私の心を揺さぶることはできなかった。

「そう想ってくださるのはうれしいです。ですけど、私にはその心を受け取る事はできません」

「それは夏樹さんを愛しているからですか?」

間髪入れずに佐伯さんは夏樹の名前をだし、辛そうな表情をする。
それでも、佐伯さんを傷つけたとしても私は自分の気持ちを正直に話す。
この世で、一番傷つけたくない人が夏樹だと分かっているから。


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