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ひと夏の恋……そして……
第19章 好きなら奪って
「短い間でしたが私が何も感じなかったと思いますか?一緒に暮らして恋心を抱かなかったとでも?」
「きっ、急に、どうしたんですか?今日の佐伯さん、変ですよ」
佐伯さんの言葉と視線にドキドキしながら、何も感じないふりをして笑う。
私が笑っても、今日の佐伯さんは笑い返してはくれない。
それどころか、ますます真剣な表情と言葉に変わっていった。
「変……ですか?そうですね。真緒さんと夏樹さんがもとに戻っていれば何も言うつもりはありませんでした。しかし、いまだに何も進展はしない。それどころか話もしないというのなら、私が身を引く意味はないと思ったんです」
「あっ、あの。でも、それでも、私は夏樹が――」
「知っていますよ。知ったうえで私は真緒さんが欲しい。夏樹さんの事が好きでもいい……和泉さんへの気持ちが残っていてもいい。それでも私はあなたの心が欲しいんです」
きっぱりと断言する姿は夏樹と正反対だった。
夏樹もこんな風に断言してくれればいいのにと、佐伯さんの言葉を聞きながら考えてしまう。