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ひと夏の恋……そして……
第21章 流れる時の中で
ソンちゃんの方に視線を向けるとお互いに微笑み満足する。
その間に店に来るお客さんは数組だけ。
夏が終われば毎年の事で、忙しかった夏の疲れ落としだと思ってのんびりと毎日を過ごしていた。
「美味しかった。こいう土地で長年やっているだけの事はある。どこに行ってもやっていける味だな。だからこその保全か」
それは最高の誉め言葉。
今まで続けてきてよかったと思う瞬間でもあった。
「ありがとうございます。金平さんにそう言ってもらえるとうれしいです」
「いや、礼を言うなら千春に言ってくれ。この味を守るために必死に自分の案を押し通したんだからな」
「この味を……?」
「この味だけじゃないだろう。この島で関わった全ての人の幸せを願ってという感じだ。……この島にいた短い時間が楽しかったようだしな」
佐伯さんがこの島に来てから半年も経ってはいない。
そしてこの島で暮らしたのも4日間という短い期間だった。
その間に島民とも仲良くなり、担当者という事を隠していたことも追及されることはなかった。
それは佐伯さんの人柄の所以。
佐伯さんだからこそ成しえたことだと思っている。