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ひと夏の恋……そして……
第21章 流れる時の中で

「佐伯さんの案が通ってよかったと思ってます。佐伯さんがいなくなってどうなることかと思ってましたが、金平さんが佐伯さんの遺志を継いでくれてよかったと、本当に心から思ってます」

頭を下げると、金平さんの手が髪の毛を撫でる。
その手は大きくて、何だか父親に撫でてもらっているような錯覚を起こしそうだった。

「この前も同じような事を言われたな。まぁ、利益だけを追求したリゾート地は何件も手掛けた。たまには人情味あふれるリゾート地を作るのもいいと思っただけだ。――それに千春の願いでもあったしな」

金平さんは寂しそうに笑った。
本当なら、佐伯さんと一緒にリゾート開発を進めたかったのかもしれない。
佐伯さんは金平さんの事を嫌っているのは目に見えて明らかだけど、金平さんは佐伯さんの事を心配しているのが伝わってくる。
過去に何があったのか分からないけど、金平さんの中には後悔だけが残り苦しんでいるように見える。
だからこそ、佐伯さんの案を受け入れ実行してくれている。
佐伯さんがいなくなった今、佐伯さんの意思を引き継いで島民に寄り添ってくれているのは金平さんだった――


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