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ひと夏の恋……そして……
第22章 それぞれの想い

今でも覚えている。
何も知らずに夏樹に港に連れて行かれ、船に乗って離れていく和泉の姿。
お互いに叫びあい、本当に会えるかどうかも分からないのに次の約束をした私たち。
それを、ただ黙って見守ってくれていた夏樹。
あの時の想いは、思い出した今でも辛い。
それだけ真剣に好きだったし、和泉以上に好きな人が現れるとは思いもしなかった。
そんな私が夏樹を受け入れた。
5年という歳月は、心を変えるには十分な年月だった。

「そうだね。その5年間の間に寄り添って力になってくれたのが夏樹だった。それが良く分かった。――真緒、真緒が佐伯と言う僕に言っていた言葉は伝わっていたよ。その言葉で真緒と夏樹の絆を知ることができた。僕がこの島を出て行った後に悲しませてしまったかもしれないけど、この5年間、真緒が夏樹と幸せだって分かってホッとしたんだ」

そう言いながら和泉は穏やかに笑う。
5年もたてば人の心は変わる。
私も和泉も良い方向に気持ちが変わっていたことに安心した。


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