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ひと夏の恋……そして……
第23章 友情と愛情と絆

「長いこと、待たせてごめんね」
夏樹の髪の毛を撫でながら待たせてしまった事を謝罪した。
「真緒が謝る事じゃない。――今、俺の腕の中にお前がいるだけでそれでいいんだ」
そう言って顔を上げた夏樹の目には涙が浮かんでいたけど、男の顔をしていた。
そして、私の頬に手を添えて撫でながら力強く言葉にする。
「過去より今だ。今より未来だ。未来の俺の傍に真緒がいればそれでいい。それだけで俺は幸せなんだ。だから振り返るな」
夏樹の言葉に、私の方も一粒の涙が頬を伝って流れ落ちていった。
過去より今、今より未来。
過去はどんなにあがいても変えることはできない。
そんな過去に囚われるより、共に歩ける未来に意味があるのだと夏樹は私に教えてくれる。
「うん。未来の私の傍に夏樹がいてくれれば私も幸せ」
同じだけの気持ちを返せば、夏樹は目尻を下げて笑う。
そして、ゆっくりと夏樹は動き出した。

