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サディスティック・マリッジ
第4章 卑猥な噂
「このバカ女ッ」

ドンッ
愛里咲の左側から何かが突進してきて、愛里咲の身体が弾き飛ばされた。

床に倒れ込んだ身体を起こして振り返ると、お局津川が琉のズボンを拭いている。


「大丈夫? 直ぐに冷やした方がいいよ」

津川が琉のベルトに手を掛ける。

「ちょっ⁉︎ 津川さんっ、ここで脱がないから‼︎ 」

琉のズボンを引き摺り下ろそうと必死になる津川の手を払う琉。


「着替えてきます」

チラリと愛里咲を見た後、琉は更衣室へと向かった。


「かわいい♡」

琉の背中を見送りながら、津川が呟く。正に目はハート。というより、獲物を狙う肉食獣のようだ。

(かわいい? 琉ちゃんがかわいいだって‼︎ )

愛里咲は琉の意地悪な笑みを思い出し小さく身震いする。そして、慌てて雑巾でお茶の零れた床を拭き始めた。


「ちょっとアンタ‼︎ 」

気付くと、津川、伊藤、神谷、荒木に囲まれていた。

「お茶汲みもまともに出来ないの⁈ 」

「夏川くんにお茶掛けるとかあり得ない!」

「こんな使えない新人始めてだわ」

伊藤、神谷、荒木から、愛里咲に向けて次々に罵声が飛ばされる。


─────使えない新人…

(最近は仕事も憶えて、残業もしなくて済んでるのにな)
愛里咲はため息を飲み込んだ。

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