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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第4章 4 検体提供
「ちょっ、あのここ……」
「僕のマンションだ」
足元のおぼつかない芳香を軽く支えるように薫樹は腰に手を回し、芳香を連れて歩く。混乱したまま薫樹の部屋の玄関に入れられ、人感センサーが反応し室内が明るく照らされる。(すごい広い……)
自分が住んでいるアパートの軽く3倍はある広さだろう。
「あがって」
促されるが芳香はスニーカーを脱げなかった。
「あの、たぶん、もう匂いがすごくて……。脱ぐと危ないと思います」
自分の足の状況を思うと一気に酔いがさめ、芳香は居心地が非常に悪くなる。
「平気だよ」
「いえ、ゼッタイ平気じゃないです。むしろ兵器です。――私がイヤなんです……。どこの誰だろうが自分の匂いを知ってほしくない……」
「ふぅ……。じゃ、どうしたら上がってもらえるのかな」
「近くに公園とかないですか?水道のある……」
「公園か――ああ。このマンションの裏にあったな。水道があっただろうか」
夜も8時を回ると公園には人気もなく静かに遊具が佇んでいるだけだ。芳香は目ざとく水飲み場を見つける。
「よかった」
バッグからフットケアのセットを取り出し、スニーカーを脱ごうとすると薫樹が側に居ることにハッとし「あ、あの、そのベンチにでも座っててもらえませんか」と木のベンチを指さした。
「ん? そう?」
大人しく薫樹は3メートルほど離れたベンチに向かう。芳香はほっとして足を洗い始めた。
「僕のマンションだ」
足元のおぼつかない芳香を軽く支えるように薫樹は腰に手を回し、芳香を連れて歩く。混乱したまま薫樹の部屋の玄関に入れられ、人感センサーが反応し室内が明るく照らされる。(すごい広い……)
自分が住んでいるアパートの軽く3倍はある広さだろう。
「あがって」
促されるが芳香はスニーカーを脱げなかった。
「あの、たぶん、もう匂いがすごくて……。脱ぐと危ないと思います」
自分の足の状況を思うと一気に酔いがさめ、芳香は居心地が非常に悪くなる。
「平気だよ」
「いえ、ゼッタイ平気じゃないです。むしろ兵器です。――私がイヤなんです……。どこの誰だろうが自分の匂いを知ってほしくない……」
「ふぅ……。じゃ、どうしたら上がってもらえるのかな」
「近くに公園とかないですか?水道のある……」
「公園か――ああ。このマンションの裏にあったな。水道があっただろうか」
夜も8時を回ると公園には人気もなく静かに遊具が佇んでいるだけだ。芳香は目ざとく水飲み場を見つける。
「よかった」
バッグからフットケアのセットを取り出し、スニーカーを脱ごうとすると薫樹が側に居ることにハッとし「あ、あの、そのベンチにでも座っててもらえませんか」と木のベンチを指さした。
「ん? そう?」
大人しく薫樹は3メートルほど離れたベンチに向かう。芳香はほっとして足を洗い始めた。