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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第20章 パフューム『KOMACHI=小町』の製作
環の持っていた故ジャンの香水『KIHI=貴妃』とほぼ変わらない調合ができたが、今一つ足りないものを感じて薫樹は一人研究室に残り、実験を続ける。
さすがに疲労を覚え、休憩をすべくロビーに出ると環が静かに座っている。
「どうしたんだ。来ていたなら、呼んでくれたらいいのに」
「ん。調香中は邪魔したくないから」
「そうか」
ジャンの元で過ごしてきた彼女は調香師の集中力を妨げない。
「で、どうした?」
「これ」
小さな小瓶を渡す。『KIHI=貴妃』だ。
「ジャンの遺品だろう。たくさんあるのか?」
「ううん、これだけ。だけどこれはジャンからあなたへのプレゼント。完成させてほしいって。もう私には必要ないしね」
確かに環は香料を身につけていないようだ。
「うーん、もうこの香り自体はほぼ完成しているんだ。これより上の完成っていうのは君が付けて初めてなすものだな」
「さすがね」
「今、何もつけていないのか」
「ええ」
「ちょと嗅いでもいいかな」
「どうぞ」
環は立ち上がり、すっと薫樹の前に立つ。
さすがに疲労を覚え、休憩をすべくロビーに出ると環が静かに座っている。
「どうしたんだ。来ていたなら、呼んでくれたらいいのに」
「ん。調香中は邪魔したくないから」
「そうか」
ジャンの元で過ごしてきた彼女は調香師の集中力を妨げない。
「で、どうした?」
「これ」
小さな小瓶を渡す。『KIHI=貴妃』だ。
「ジャンの遺品だろう。たくさんあるのか?」
「ううん、これだけ。だけどこれはジャンからあなたへのプレゼント。完成させてほしいって。もう私には必要ないしね」
確かに環は香料を身につけていないようだ。
「うーん、もうこの香り自体はほぼ完成しているんだ。これより上の完成っていうのは君が付けて初めてなすものだな」
「さすがね」
「今、何もつけていないのか」
「ええ」
「ちょと嗅いでもいいかな」
「どうぞ」
環は立ち上がり、すっと薫樹の前に立つ。