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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第22章 ラブローションに溺れて
 完成した試作品の香水を持ち、薫樹は会社の会議に出席する。
これからの売り出し方やコマーシャルなどのことはほぼ決まっている中で、薫樹は発言の機会をうかがっている。
 試作品とはいえ調香した香水は役員他、一般社員にも試香されたが高評価で変更はないだろう。出来栄えの良さに社長は海外進出がもう成功したような顔をしている。

「すみません。よろしでしょうか」
「なんだね、兵部君」
「この『KOMACHI=小町』ですが名称を変えていただきたい」
「ええ? 何を言い出すんだね」

 ざわめく中で薫樹は澄んだ声で続ける。
「小町という商品名では、外国の方々には少しマニアックでしょう。いっそのこと『TAMAKI』にしてみては」

 薫樹の発言で更に騒めくが、半分以上はその提案の方がよさそうだと頷いているものもいる。

「確かにTAKAKIさんの知名度は海外で高いからなあ」
「小野小町が世界三大美女って言ってるの日本だけらしいし……」

 この議題はまた会議にかけられることになったが、おそらく薫樹の提案が通るであろう。
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