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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第22章 ラブローションに溺れて
 壇上では、黒地に金銀の唐草模様と大輪の花々が描かれている振り袖を着たTAMAKIが、パフューム『TAMAKI』を手に持ち、アルカイックスマイルでポーズを決めている。
 漆黒のボブヘアーには何も飾られておらず、褐色の肌はブロンズ色に輝いていてジャパネスクとアジアンがいい塩梅で融合している。

 香水の瓶はシンプルなスクエア型で中には琥珀の液体がきらめき揺れる。バシャバシャとたくさんのフラッシュがたかれ撮影は長く続くが環の集中力は衰えを知らない。彼女と香水を目の当たりにすると成功しないわけがないと誰もが感じる。
 これをきっかけに『銀華堂化粧品』の海外進出が滞りなくなされていくだろう。


 大きな仕事を終えて薫樹は少し有給休暇を取ることにした。今回も高評価を得るが0から生み出した作品ではないため薫樹にとっては複雑な気分だ。
 のんびりマンションでくつろいでいたが、リフレッシュしたいと思いカフェ『ミンテ』に行くことにした。

 芳香に昼休みがあるなら『ミンテ』にいるとメールを送り、休日を楽しむべくゆるゆると出かけた。
昼前に着くと珍しく店はがらんとしており、ドアに目をやると「定休日」となっていた。
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