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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第22章 ラブローションに溺れて
「ああ、休みなのか」
 うーんと考えているとちょうど芳香が走ってやってきた。

「薫樹さーん」
「ああ、芳香。すまない定休日だった」
「あ、ほんとだ。どっか他に行きます?」
「そうだな。できるだけ君の職場の近くにするかな」
「ありがとうございます。店長がゆっくりしてきていいよって言ってくれたのでそんなに急がなくても大丈夫です」
「そうか」
「はい」

 嬉しそうな芳香と見つめ合っているとカフェ『ミンテ』の扉が開き中から声がかけられた。

「兵部さーん。芳香ちゃーん」
「あ、清水さん」
「ん?」

 涼介がエプロン姿で出てきた。

「来てくれたんですか?」
「ああ。でも定休日だったと知らなくて今、他所へ行くところだったんだ」
「そうでしたか。どうぞ、良かったら入ってください。今、試作の料理だしますから」
「いいのかい?」
「どうぞどうぞ。ちょっと報告もありますしね。芳香ちゃんもどうぞ」
「は、はい。失礼します」

 店内にはいると温かい雰囲気の中に爽やかなミントが香る。

「そこ掛けててください」

 店の中央に薫樹と芳香は腰かけ、涼介は厨房へと入っていった。

「試作ってなんでしょうね」

 芳香はすでにわくわくした様子で、目を輝かせている。薫樹はそんな彼女にもう満たされていた。
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