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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第5章 5 試作

「あ、あの、サンドイッチを買ったんですが一緒に食べませんか?」
「え、あ、ああ。そうするか……」

 物思いにふけっている薫樹に声を掛けるとすぐに気持ちを切り替えたようだ。

「よく自分の体臭は分からないというが、まさか僕もそうだったとは」
「指は近いですもん。足と違って。しかもすごくいい匂い」
「いい匂い――か」

「最近足の匂いがひどくないのはきっと薫樹さんの指先からの香りが影響してるんでしょうね」
「――むぅ。シートにもうひと捻り加えないといけないな。――君はかけがえのないひとだな」

 芳香は自分が役に立っていることがとても嬉しい。
例え短期間の交わりだとしてもボディーシートは形として残るのだ。
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