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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第9章 第二部 女友達
今夜は薫樹のマンションに泊まる。彼は一緒に住もうと言ってくれているが、まだ芳香には決心がつかない。
無機質な彼の部屋が生活感にあふれると嫌になるのではないかと話すと、やってみないとわからないという返答でとりあえず、週末を彼のマンションで過ごすところから始める。
料理を全くしない薫樹の台所はピカピカで使うのをためらう。とはいえ、料理をしないわけにはいかないだろう。
全て外食でも経済的に困ることはないという恐ろしく芳香と生活レベルの違う話をされると余計に一緒に暮らす自信がなくなる。
「芳香が作りたいなら食べるよ」
「あ、はあ……」
意外なのは好き嫌いが全くないことだ。味付けにもさほどうるさくはない。ただし合成香料が使われていると食事と思えなくなるらしい。
そして体臭にならないように食べ物に気を付けてきた芳香の手料理を喜んで食べた。
「美味しいよ」
「よかったあ……」
薫樹は仕事以外のことにはあまり頓着がない様で、思ったより細かくなかった。
家でも調香の仕事をするために匂いがこもらない様にしているが、芳香がやってくるときには仕事をしないつもりのようで料理が香り高くてもよいらしい。食事を終え、片付けていると薫樹も手伝ってくれる。
「もっと亭主関白だと思ってました」
「ん? 作業はおっくうじゃないよ」
「さ、作業……」
「結婚したらマンションはやめて二件家を建てればよいかな。それとも隣を借りるか……」
「は、はあ……」
まだまだ馴染むまでに時間がかかりそうだが、嫌だと思う部分は今のところ出てこない。
無機質な彼の部屋が生活感にあふれると嫌になるのではないかと話すと、やってみないとわからないという返答でとりあえず、週末を彼のマンションで過ごすところから始める。
料理を全くしない薫樹の台所はピカピカで使うのをためらう。とはいえ、料理をしないわけにはいかないだろう。
全て外食でも経済的に困ることはないという恐ろしく芳香と生活レベルの違う話をされると余計に一緒に暮らす自信がなくなる。
「芳香が作りたいなら食べるよ」
「あ、はあ……」
意外なのは好き嫌いが全くないことだ。味付けにもさほどうるさくはない。ただし合成香料が使われていると食事と思えなくなるらしい。
そして体臭にならないように食べ物に気を付けてきた芳香の手料理を喜んで食べた。
「美味しいよ」
「よかったあ……」
薫樹は仕事以外のことにはあまり頓着がない様で、思ったより細かくなかった。
家でも調香の仕事をするために匂いがこもらない様にしているが、芳香がやってくるときには仕事をしないつもりのようで料理が香り高くてもよいらしい。食事を終え、片付けていると薫樹も手伝ってくれる。
「もっと亭主関白だと思ってました」
「ん? 作業はおっくうじゃないよ」
「さ、作業……」
「結婚したらマンションはやめて二件家を建てればよいかな。それとも隣を借りるか……」
「は、はあ……」
まだまだ馴染むまでに時間がかかりそうだが、嫌だと思う部分は今のところ出てこない。