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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第9章 第二部 女友達
「どう? 兵部さんとはうまくいってる?」
「うん、まあ、なんとか。ちょっと変わってる人だからよくわかんないけど」
「そっかあ。でも会社でたまに兵部さん見かけるけどなんか雰囲気かわったよ、なんか人当たり良くなったっていうか」
「へええ。そうなんだあ」
芳香の恋人、兵部薫樹は調香師としても勿論、仕事もよくできると評判だが、芳香が勤めているころは、そっけなく冷たい仕事人間の印象だった。
「この前『立花さん、おはよう』って名前付きで挨拶してくれるもんだから、その時側にいた、なんだっけあのイメージガールに睨まれちゃって……」
「えっ! 睨まれたの?」
オレンジジュースを一口啜って真菜は頷きながら続きを話す。
「そそ。『フォレストシリーズ』のモデルとは思えないよ、実際はきつくて怖いったら――」
イメージガールと言えば、一度、薫樹と一緒にカフェにいるところを見かけたことがある。年齢は恐らく二十代前半で、芳香と真菜より若いだろうが、堂々として迫力があり、しかもセクシーだった。その時の二人がとてもお似合いで、芳香はそっと淡い恋ごごろを胸の奥にしまい込んだ。
「そんな暗くならないでよ。大丈夫だよ、兵部さんはあの子に興味ないみたいだし」
「前はそう言ってくれたけどね」
「気にしない気にしない。ほんと入社してからずっとクールなイメージしかなかったけど、芳香ちゃんが兵部さんをいい感じに変えてるよ」
「そ、そうかな」
「うんうん」
「真菜ちゃんとこはどう?」
「えっとねえ――来年、入籍しようかなって」
「へええー! おめでとうー!」
「まだまだわかんないよ」
そういいながらも真菜は嬉しそうに頬を染めている。彼女の恋人は元々近所の幼馴染だそうだ。子供のころから姉弟のように育ち成人するまで恋愛感情を持たずに過ごしてきた。それが今は恋人なのだ。どこでどんな出会いがあるか本当にわからないものだと芳香は思う。
そして明るく優しい真菜がいつまでも仲良くしてくれますようにと芳香は願う。
「うん、まあ、なんとか。ちょっと変わってる人だからよくわかんないけど」
「そっかあ。でも会社でたまに兵部さん見かけるけどなんか雰囲気かわったよ、なんか人当たり良くなったっていうか」
「へええ。そうなんだあ」
芳香の恋人、兵部薫樹は調香師としても勿論、仕事もよくできると評判だが、芳香が勤めているころは、そっけなく冷たい仕事人間の印象だった。
「この前『立花さん、おはよう』って名前付きで挨拶してくれるもんだから、その時側にいた、なんだっけあのイメージガールに睨まれちゃって……」
「えっ! 睨まれたの?」
オレンジジュースを一口啜って真菜は頷きながら続きを話す。
「そそ。『フォレストシリーズ』のモデルとは思えないよ、実際はきつくて怖いったら――」
イメージガールと言えば、一度、薫樹と一緒にカフェにいるところを見かけたことがある。年齢は恐らく二十代前半で、芳香と真菜より若いだろうが、堂々として迫力があり、しかもセクシーだった。その時の二人がとてもお似合いで、芳香はそっと淡い恋ごごろを胸の奥にしまい込んだ。
「そんな暗くならないでよ。大丈夫だよ、兵部さんはあの子に興味ないみたいだし」
「前はそう言ってくれたけどね」
「気にしない気にしない。ほんと入社してからずっとクールなイメージしかなかったけど、芳香ちゃんが兵部さんをいい感じに変えてるよ」
「そ、そうかな」
「うんうん」
「真菜ちゃんとこはどう?」
「えっとねえ――来年、入籍しようかなって」
「へええー! おめでとうー!」
「まだまだわかんないよ」
そういいながらも真菜は嬉しそうに頬を染めている。彼女の恋人は元々近所の幼馴染だそうだ。子供のころから姉弟のように育ち成人するまで恋愛感情を持たずに過ごしてきた。それが今は恋人なのだ。どこでどんな出会いがあるか本当にわからないものだと芳香は思う。
そして明るく優しい真菜がいつまでも仲良くしてくれますようにと芳香は願う。