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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第11章 3 真菜の秘密
 子供のころからの幼馴染に男としての意識を全くしたことがなかったが、今、ちょっとつついてやる程度の言葉攻めで和也から初々しい態度を見せられ、真菜は興奮し始めている。

「ねえ。あんた、今、彼女とかいるの?」
「ん? いない。あんまり、続かないんだ」
「なんで。和也は優しいから昔からよくモテてたし大事にするでしょ」
「うん。優しくしてるつもりだけど、相手からするとつまんないんだってさ」
「へえぇ。強気に出て言うこと聞かせようとか思わないの?」
「俺、そういうのダメなんだよな」

 がっしりした体格なのに顔は幼げで小動物のような表情をする。

「和也ってかわいいね」
「か、かわいいってなんだよ」

「ふふっ。――あんたMなんでしょ」
「えっ、ち、ちが……」
「違わないでしょ?」
「誰にも言わないでよ? なんか、たぶん、俺――Mなんだと思う」

 真っ赤になって下を向く和也を真菜は泣かしてみたくてたまらなくなる。

「内緒にしてあげるからさあ。――私の言うこと聞いてくれる?」
「え、何、すんの?」
「別に朝帰ったっていいんでしょ? 家」
「ああ、別にいいけど」

「じゃ、そこのラブホでお仕置きしてあげる」
「ええっ!?」
「黙ってついてきて」
「ん……」
 やっと望む相手が見つかった気がして真菜は即行動に出る。和也も抵抗せずに真菜について歩いた。
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