この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第12章 4 ルームフレグランスの調香
「薫樹さんはいるのかなあ」
撮影をしている現場から少し離れたビルの陰にスーツ姿の長身の男が見えた。
「あっ、あんなとこにいた!」
どうやら女性記者から取材を受けているようで、メモを取っている女性に薫樹は腕組みをし、眼鏡を直しながら答えている。
記者はメモをとりながら少しずつ薫樹との距離を詰めていき、鼻先を回しながらうっとりした表情で、もはやペンは動いていない。そういった態度に慣れているのだろう薫樹は近づく女性に対して眉一つ動かさない。
「はあ……。薫樹さんっていい匂いのする花みたいだなあ……」
遠目から見ても素敵だと思う反面、女性を惹きつける様子は見ていて辛い。
これで薫樹が嬉しそうに笑顔で対応していたならば、彼のマンションへ訪れる足が遠のくだろうと芳香は考える。
気を取り直して撮影現場を見るともう撮り終わっていたようで、美月はにっこりと取り巻く人たちに笑顔を振りまいている。
「うわー。かっわいいなあー」
改めて芸能人を間近に見ると、恐ろしく一般人とは、もちろん自分とは違う生き物に見える。
「はあ……。ため息しか出ないや」
何をしに来たのかよく分からなくなったが、時間が迫ってきたので急いで店に帰ることにした。
撮影をしている現場から少し離れたビルの陰にスーツ姿の長身の男が見えた。
「あっ、あんなとこにいた!」
どうやら女性記者から取材を受けているようで、メモを取っている女性に薫樹は腕組みをし、眼鏡を直しながら答えている。
記者はメモをとりながら少しずつ薫樹との距離を詰めていき、鼻先を回しながらうっとりした表情で、もはやペンは動いていない。そういった態度に慣れているのだろう薫樹は近づく女性に対して眉一つ動かさない。
「はあ……。薫樹さんっていい匂いのする花みたいだなあ……」
遠目から見ても素敵だと思う反面、女性を惹きつける様子は見ていて辛い。
これで薫樹が嬉しそうに笑顔で対応していたならば、彼のマンションへ訪れる足が遠のくだろうと芳香は考える。
気を取り直して撮影現場を見るともう撮り終わっていたようで、美月はにっこりと取り巻く人たちに笑顔を振りまいている。
「うわー。かっわいいなあー」
改めて芸能人を間近に見ると、恐ろしく一般人とは、もちろん自分とは違う生き物に見える。
「はあ……。ため息しか出ないや」
何をしに来たのかよく分からなくなったが、時間が迫ってきたので急いで店に帰ることにした。