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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第13章 5 デート
 かすかに感じられる立ち上る香りを確認し、ダイニングに向かった。
ちょうど芳香が出てきたようだ。

「薫樹さん、お先でした」
「ん、じゃ僕も入ってくるから、そのハーブティーでも飲んだらいい」
「あ、ありがとうございます」


 少しだけ冷やされたローズヒップティーだ。透き通った赤い色が美しい。

「今夜……こそ」

 芳香の心臓が早鐘を打つ。ローズヒップの酸味が少しだけ冷静さを促すが、一瞬でしかない。
自分のために淹れてくれたローズヒップティーを、噛みしめるようにゆっくりと大事に飲み干し、芳香は寝室へ向かった。
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