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星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
「…素敵だわ…。
まるで昔の時代にタイムスリップしたみたい…」
由貴子が運河を下りながら、感嘆のため息を吐いた。

運河から見る町並みは鄙びて古めかしく懐かしく…かつてくらした海の田舎町を思い起こさせた。
頭上ぎりぎりの古い石造りの橋を潜り抜ける。
川べりでは地元の人々が野菜を洗ったり、烟草を吸いながら長閑に談笑したりと、ゆったりとした時間が流れているようだ。
…メトロポリス浦東や上海の外灘に比べるとまるでここは別世界であった。

…さしずめヴェニスのゴンドラ…といった古くこじんまりした木製の遊覧船に二人は乗っていた。
貸し切りなので、由貴子の肩を抱きながら身体を寄せ合う。
由貴子は菖蒲色の地に白い牡丹の刺繍を施したロング丈のチャイナドレスに、浅藤色のカシミヤのストールを巻きつけている。
白い素足に履いているのは黒い繻子にビーズをあしらった踵の低いチャイナシューズだ。
夜会巻きに纏めた髪にライラックの花を挿しているのが嫋やかに似合っている。

匂い立つように美しい姿の由貴子に暫し見惚れて、年配の船頭が北京語で宮緒に尋ねた。
『えらく別嬪さんだね。奥さんかね?』
宮緒は一瞬戸惑い…けれどすぐに笑顔で答えた。
『ああ、そうだ。
美人だろう?自慢の女房だ』
船頭は口笛を吹いた。
『こんなに美人な奥さんがいるなんて、あんたは三国一の幸せもんだよ』

北京語はまだ殆ど分からない由貴子が不思議そうに見上げた。
「なあに?何て?」
「…ターへンピャオラン…君のことをとても綺麗な娘さんだ…て」
「嫌だわ。そんなお世辞…」
由貴子が赤くなって俯いた。
「お世辞じゃないよ。僕もそう思っている」
膝にかけられたケットの下で手を握りしめる。
返事の代わりに由貴子は黙って手を握り返した。
…いつか、由貴子にプロポーズしたい…。
彼女と正式に結婚したい。
その想いは日に日に熱く高まってくる。

船が美しい屋根付きの廓橋に差し掛かった時、宮緒は由貴子の貌を引き寄せ唇を甘く奪った。
「…由貴子…愛しているよ…」
「…あ…んんっ…」
橋の陰で見えないと分かったのか…それとも旅先の開放感からか、由貴子は宮緒の首筋に白い腕を絡め、しなやかに応えた。

船頭は見ぬふりをし、牧歌的な中国の舟唄を歌いながら櫂を漕いだ。



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