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星逢いの灯台守
第1章 名も知らぬ薔薇
…それから、宮緒の願いも虚しく、二人の距離は縮まることはなかった。
…仮面夫婦…。
まさに二人はそうだった。
人前では二人は仲睦まじい夫婦を演じた。
宮緒ですら、その姿が真実ではないかと思うほどに一分の隙もなく完璧な理想的な夫婦そのものであった…。
麻季子は程なくして、若い男の愛人を作った。
会社の部下がこっそりと宮緒に伝えたのだ。
当然、片岡にも伝わっている筈だった。
しかし、片岡は何も言わなかった。
…片岡の使いで行った銀座の高級ホテルのロビーで、宮緒は若い愛人を連れた麻季子と偶然に出逢った。
二人は一瞬だけ視線を合わせ…やがて何事もなかったかのようにすれ違った。
若いホスト風の優男に馴れ馴れしく肩を抱かれながら、麻季子は陽気に笑っていた。
…けれど、すれ違った時の眼差しは深い深い諦観を帯びていた。
宮緒はしばらく、麻季子のその眼差しを忘れられずにいた。
…兄さんは…何を考えているのだろうか…。
それは、絶対的に信頼していた兄への針の先ほどの疑念が初めて生まれた瞬間であった。
…仮面夫婦…。
まさに二人はそうだった。
人前では二人は仲睦まじい夫婦を演じた。
宮緒ですら、その姿が真実ではないかと思うほどに一分の隙もなく完璧な理想的な夫婦そのものであった…。
麻季子は程なくして、若い男の愛人を作った。
会社の部下がこっそりと宮緒に伝えたのだ。
当然、片岡にも伝わっている筈だった。
しかし、片岡は何も言わなかった。
…片岡の使いで行った銀座の高級ホテルのロビーで、宮緒は若い愛人を連れた麻季子と偶然に出逢った。
二人は一瞬だけ視線を合わせ…やがて何事もなかったかのようにすれ違った。
若いホスト風の優男に馴れ馴れしく肩を抱かれながら、麻季子は陽気に笑っていた。
…けれど、すれ違った時の眼差しは深い深い諦観を帯びていた。
宮緒はしばらく、麻季子のその眼差しを忘れられずにいた。
…兄さんは…何を考えているのだろうか…。
それは、絶対的に信頼していた兄への針の先ほどの疑念が初めて生まれた瞬間であった。