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フリータイム
第2章 終電と眠る女
 夜の公園のベンチにポツンと一人座っているのも嫌になった私は、いい加減に帰るかと思って立ち上がりました。
 
 実はこの時、終電間際の午後十一時五十分。仕事が終わったのはこの一時間前です。東京などの大都市は分かりませんが、勤めている会社がある都市の終電は十二時二十分。これを逃してしまっては、朝になるまで帰れません。快速電車で片道三十五分の距離。タクシーを使おうものなら運賃一万円は超えるし……。

 今思えばこの時、この時間も、このタイミングが転機だったのでりょう。無駄に寄り道しないで、退社してすぐに駅に向かっていれば、これから起こるようなことにはならなかったのかもしれません。

 ……まあ、確証はありませんけど。

 ……いやしかし、遅かれ早かれいずれは……。

 私は帰りの駅のホームに立って電車を待っていました。いつもは階段を上がってホームに出たすぐのところで電車を待つのですが、この日はなんだか人と関わりたくない気分。普段は考えることもなかった物思いなどをやってしまったせいか、妙に落ち込んでおりました。
 
 地方とはいえ都市部。終電でも駅は賑やかなもんで、人々の雑踏が鬱陶しいことこの上ない。それで、ラッシュ時以外は人が少ない先頭車両に乗ろうと思ったんです。案外面倒くさくて、両端の車両が止まるところまで歩くのはおっくうだから、ほとんどの人は中間の車両に乗り込むんですよね。自分が降りる駅に着いたら着いたで、また長く歩かなきゃならないし。
 
 案の定、電車の先頭車両が止まる場所にいくと、そこで待っている人は十人ほどしかいませんでした。

 ホームに入ってきた電車の先頭車両には、人がほとんど乗っていませんでした。確か二、三人かな。おかげで列の最後尾で待っていた私も楽々と窓際の席に座れましたが、「ふう」と安堵したと同時に、その日一日で蓄積した疲れがどっと押し寄せてきたのを覚えてます。

 まばらな車内。隣には当然誰も座っておらず、私は少し脚を広げて、鉛のように重たく感じる体をフカフカの座席に埋めました。
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