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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第2章 お泊り会
────ザァァァァァァァァァ
降り注ぐ無数の雫が、傷口に染みる。
これが私の過去。
誰にも打ち明けられない秘密。
私はシャワーのレバーをひねってお風呂から上がり、タオルで全身を丁寧に拭き取っていく。
…それにしても着替えのTシャツ、明らか白馬くんのものだよね。
サイズめちゃめちゃデカイもん。
これ絶対袖が余るやつだ。
とはいえ着るものがこれしかないので、袖を垂らしたままリビングに戻る。ちなみに下は、私が元々履いていたタイツだ。
「白馬くん、お風呂ありがとう…ってあれ。」
ガチャリとドアを開けると、そこにはソファで屍のように眠る白馬くんがいた。
「…ずいぶんお疲れだ。一週間王子様モードだったわけだししょうがないか。」
彼の前にしゃがみ込み、じっくり寝顔を観察してみる。
まつ毛長い。肌綺麗。鼻筋めっちゃ通ってる。
なんていうか、まるで────
「天使みたい…。」
そう呟いたその時。
「そりゃどーも。」
「ウワァァァァァァ!!」
開く様子のなかった瞼が勢いよく開かれた。
やめてよなにこのホラー展開。
「お、起きてたの?」
「起きてた…けど…、あ、ダメだやっぱ眠い瞼が強制終了させてくる…。」
ほとんど瞼がくっついているのに、頑張って起きようとするその姿は……
あー、ほら、あれだ、眠気に逆らう2歳児みたい。
「明日休みだし、眠いならそのまま寝ちゃう?」
「嫌だ朝風呂めんどい…。」
むっくり起き上がり、壁にぶつかりながらも風呂場へ向かっていく。
そんな彼を後ろからハラハラ見守っていると、「あ、そーだ。」とドアノブに手をかけたまま、コチラを振り返ってきた。
「先輩、傷は染みなかった?」
まさか傷の心配をしてくれるとは。思わず面食らってしまう。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう。」
「そう。」
微笑みながらそう告げると、白馬くんはホッとしたような表情でリビングを出ていった。
さて。
隅に置いていたカバンからスマホを取り出し、ソファに腰を掛けながら通知をチェックしていく。
業務連絡にニュース、ゲームのアップグレード通知…。
その中に混じって、『平田くん』の文字が目に飛び込んできた。
「…まぁ明日会うわけだし、当然か。」