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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
あぁ、近くで見れば見るほど彼の機嫌の悪さが際立つ。
……そして、近づけば近づくほど私の心にモヤがかかる。
毎回白馬くんが独占欲をむき出しにしてるけど、
私だって無いわけじゃない。
どちらかといえば、いい子を演じてるだけ。
内心けっこう嫉妬してたりするんだよ。
────だから、たまにはいいよね。
私は女の子たちの隙間を縫って彼の元に近づき、
ぎゅっと彼の手を両手で握った。
驚いたように私の方を見る白馬くん。
女の子達も少しびっくりしてる。
恥ずかしいし、ちょっぴり怖さもあるけど。
私は握る手に力を込めながら、
意を決してキッパリと告げた。
「すみません、この人わたしの彼氏なので。」
ピシャリ。空気が凍る。
白馬くんは呆然と私を見てて、
女の子達はちょっと戸惑ってるみたい。
すると、突然白馬くんがフッと微笑み、
褒めるように私の頭を撫でてきた。
「ごめんね。俺の彼女がこう言ってるし、そろそろ行かなきゃ。断っても何度もしつこく誘ってもらっちゃったのに本当にごめんね?」
白馬くんは爽やかに王子スマイルを浮かべながら、
それとは正反対にトゲのある言葉をぶつける。
うん、相当イライラしてたんだね。
女の子達の反応を待たず、
「行こっか」と言いながら彼が私の手を引っ張る。
……馴染みのある体温と、見慣れた大きな背中。
「……白馬くんごめんね、いきなりあんなことしちゃって。」
冷静になって考えると、少し子供すぎた気がする。
もっと上手にあの場を切り抜ける方法があったはずなのに。
申し訳なさからポツリと謝ると、
彼は前を向いたまま軽く笑った。
「いーよ、俺は嬉しかったし。来てくれてありがと。」
そう言いながら、彼が大きな木の後ろで足を止めた。
私たちを隠せてしまうほどの大木。
更にはみんながいるところからかなり離れた場所。
……誰にも見られない。
白馬くんがこちらを向き、
私の頬に両手を添えて上に向かせた。
彼の優しい眼差しに、視線が絡み取られる。
「珍しいね、嫉妬してくれたの?」
「……私、白馬くんが思うほどいい子じゃない。ホントは前からすごく嫉妬してる……。」
本心を彼に打ち明けると、
彼がクスッと微笑みながら、ゆっくりと私に顔を近づけた。