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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第3章 本物のヒーロー
「送ってかなくて大丈夫?」
「まだ昼間だし平気だよ。それに、白馬くんも用事あるんでしょう?」
お泊まり会も終盤を迎え、あとは帰宅するのみ。
ちょいちょいトラブルはあったものの、何事もなく無事終えられた。
…よし、今度はコンビニ袋忘れてない。ちゃんとカバンに入ってる。
「それじゃあ私、もう行くね。意外とお泊まり楽しかったよ。」
からかうように笑うと、白馬くんも「それは良かった。」と微笑んでくれる。
すると、彼が何かを思い出したように上着のポケットを漁りだした。
「そうだ、先輩。最後にこれ。」
そう言いながら差し出されたのは、『兎谷(うさぎたに)神社』と書かれた朱色の小さな小袋。
「なにこれ?」
「超ご利益があるって噂のお守りです。朝食の時、老けそうなほど深刻な顔してたから。」
「老けそうは余計だよ。」
ジトッとした目で睨みつけるも、軽く笑って流されてしまう。
「まぁまぁ、貰ってくださいよ。イケメン過ぎて神に嫉妬される俺より、先輩が持つ方が効果あるでしょ?」
王子スマイルで、さも当然のように言われる。
場を和ませようとしてくれてるのか、はたまた残念なだけなのか。
それでも、私を気遣ってくれてる気持ちは伝わるから。
「ありがとう、大事にするよ。」
不思議とさっきよりずっと心強い。貰ったお守りをカバンにそっとしまい、今度こそお世話になった白馬くんの家を出る。
「また明日ね。」と手を振れば、彼は小さく会釈を返してくれた。
大丈夫。また明日、いつもと変わらない元気な姿で彼と会える。
そう自分に言い聞かせながら、重たく曇った空の下を力強く歩き始めた。
────白馬サイド────
先輩の姿が見えなくなるまで見送ったあと、一人静かになったリビングへ戻る。
彼女は終始笑顔だったけど、俺に隠し事してる感満載だった。後輩でも男なんだから頼りゃいいのに。
ソファに背中を預け、天井を仰ぎながら「ふぅ」と一つため息をつく。
「さて…、昨日のミッションはクリアしたし、あとは協力の要請だな。」
テーブルに置かれたスマホを取り、電話帳からある名前を引っ張り出す。
…アイツはあんまり得意じゃないけど、四の五の言ってる場合じゃねぇし。
コールが二回ほど鳴り、プツッと電話がつながった。