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ハンカチの君
第10章 終わらない一日
「おい、おい!!」
圭子が目を開けると、部屋の中は薄暗くなっていて、窓の外には月が見えた。

圭子の一人暮らしする部屋はワンルームで狭く、お金がなかったので、親戚のお古の少しカビ臭い布団を使っていた。
布団カバーも毛羽立っていて寝心地は悪かったが、圭子は床でも寝れるタイプなので、特に問題はなかった。

だけど、やはりカビ臭くない、いいマットレスを使っている悠馬の布団で寝るとつい寝過ごしてしまった。
やはりいい布団はそれだけの価値があるのだろうなと思っていた。

何時間寝てしまったのか分からなかったが、寝起きで頭が働かなくて、悠馬の声を無視してしまった。

「おい!!」
悠馬は目が虚な圭子にイラついた声で怒鳴ると、圭子のまだ赤く腫れた乳首を軽くつまんだ。

「んぐぅ!!」
圭子は痛みに意識をはっきりと取り戻して、先ほどの鞭で叩かれたせいで、全身が痛いことを思い出した。

「お前何時間寝てるんだ?腹が減ったんだけど。」
悠馬はどうやらお腹が空いたようで、圭子を起こしたようだった。

お腹が空くまで圭子を寝かせといてくれたのは、優しさかそれとも特に用がなかったからなのかと考えて、後者しかありえないと思った。

圭子は全身痛くて重い体を無理やり起こした。
普段なら悔しいので少しは文句を言うが、今日は一日命令を聞く約束をしてしまったので、何を言っても無駄だろうと思った。

「ご…申し訳ありません。すぐ作ります。」
圭子はなぜか今日一日敬語で話さらければならなかったことを思い出して、ベットから立ち上がると悠馬が布を渡してきた。

受け取って広げると、薄暗い部屋の中では見えにくかったが、紫色の薄地のエプロンだった。

白色のレースで縁取られていて、上半身はハートの形になっていた。
ショーツがギリギリ隠れるくらいの長さで、ハート形のレースがついたポケットが一つ付いていた。
生地は薄く透けるようなデザインで、服の上から着るような普通のエプロンに見えなかった。

恐らく、これ一枚で着る物だろう。
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