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もしも勇者がラスボスと子作りをしてしまったら。
第2章 僕は勇者です。
「お待たせ、旦那!」

丸太作りの小屋の中。

カウンター越しから活のある声と一緒に、髭もじゃでガタイの良い道具屋のおじさんが現れた。

その手には小さな壺が握られている。

「これがこの前頼まれた『精力100倍! ベヒーモスのひげエキス』だ! いやー手に入れるのに苦労したよ」

ははっと頭をかきながら豪快に笑う店主を見て、僕は申し訳ない気持ちになった。

「すいません……お忙しいのに、無理を頼んでしまって」

まるで取引先に頭を下げるように、おずおずとした口調で伝えれば、相手が慌てて両手を振る。

「何言ってるんだい! この世界をあの魔王から救ってくれた勇者様の頼まれごととなれば、地球の反対側からでも取り寄せちゃうよ!」

そう言ってまた店主はふくよかなお腹をさすりながら笑う。

この道具屋は、ラストダンジョンに入る前の荷造りの時にも活用したほど、お世話になっているお店。

体力やMPを一度で全回復してくれるアイテムはもちろんのこと、明らかに戦闘とは関係のないマニアックなものまで扱っているのだ。

今目の前のカウンターに置かれている増強剤もその一つ。

薬草、ポーション、それに聖水など、元の世界の人間からすれば「あんた頭大丈夫?」と言われそうなアイテムを使ってきた僕だけれど、こんな増強剤を使うのはさすがに初めてだ。

羞恥心を露わにしながら、ぎこちなく小さな小瓶をチラチラと見ていると、突然店主がぐっと顔を近づけてきた。

「ところで旦那。やっぱり世界を救ったお方ともなれば、こっちの関係も大変ですね」

妙に小声で話し出しかと思うと、店主はニヤニヤとした表情を浮かべながら、右手の小指を立ててきた。

おまけに、「今夜は何人ぐらい相手にするんですか?」と確信めいた口調で聞いてくるではないか。
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