この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
飼い殺しの犬
第1章 飼い殺しの犬
……柚木
「おい、柚木」
ぴたぴたと冷たい物が軽く当てられ、意識が戻ってくる。
遠くから聞こえる、懐かしい声。
──まさか、山下……?
なんて。
きっとこれは幻聴。
ああ、とうとうここまできちゃったか。
頭の痺れは取れないし、脳が欲しいって執拗に訴えてくる。
開きかけた瞼を再び閉じれば、ぴたっと冷たい物が頬に押し当てられた。
「……おい柚木、起きろ」
今度はハッキリと聞こえる。
重症だ。
「どういう事だよ、これ」
……違う。
パッと目を開ければ、僕を見下ろす山下の顔が。
「………っ、」
途端に蘇る、羞恥心。
手足を拘束され、顔や口には塗れたザーメン。
おまけに全裸。
この状況を、幼馴染みでもありサークルメンバーでもある山下に見られるなんて……
「なん、で……ここに……」
「それはこっちの台詞」
言いながら、山下は持っていたペットボトルを脇に置いた。
「渡瀬先輩に呼び出されて来たんだよ。したらいなくて、お前が……」
……いないのか、先輩。
「てか、何なんだよこれ」
眉間に皺を寄せながら、僕の両手首に視線を移す。
手錠。その鎖部分に引っ掛けた太い鎖の先は、杭で壁に固定されていた。
ついでに言うと、足首にも手錠が嵌められている。
最初の頃はどうにかして脱出しようと試みたが、見ての通りの結果だ。
薄く笑みを漏らせば、山下が僕に視線を戻す。
「……僕にも、よく解んない」