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蘇州の夜啼鳥
第2章 かりそめの恋
「…そう。
分かっているならいいんですよ。
シャオレイは僕が幸せにします」
雨航は挑戦的な眼差しで片岡を見遣った。
「僕は北京芸術大学の院を卒業したら中国を離れます。
…僕の父親は、民主化運動に加担した疑惑をかけられて失脚しましたから…ここにいても家名を雪ぎ、家を立て直すことはできないのですよ。
…それに…中国では未だに自由に音楽活動することもできない。
特に僕は、公安からもマークされていますしね。
だからアメリカに渡ります。
シャオレイも連れてゆきます。
自由の国アメリカで…シャオレイと二人、新しい人生を始めます。
僕と結婚した方が、シャオレイは幸せになれる。
同じ中国人同士だし、シャオレイのことは子どもの頃からよく知っているし…何より僕はずっとシャオレイのことを好きだった。
貴方よりずっと…シャオレイを幸せに出来る」

…眩しいほどに将来の希望に満ち溢れた眼差しときっぱりと自信に満ちた言葉であった。

「…そうか…。君の二胡は素晴らしかった。
若い君たちなら、いくらでも明るい未来の展望が開けるだろうな。
健闘を祈るよ」
微笑み、艶やかな長袍の肩に手を置く。

「…じゃあ、暁蕾に…よろしく伝えて…」

…言いかけて、口籠る。
肩に置いた手が止まる。

…暁蕾…
綺麗な名前だ…
美しい音楽のような名前…
…それから…

この美しい名前の持ち主を…俺は…!
脳裏に暁蕾の無邪気な美しい笑顔が煌めく。
甘く痺れるような閃光が走る。

「…ターレン?」
怪訝そうな雨航の瞳と眼が合う。

「…確かに…君と一緒になったら、暁蕾は幸せになるだろうな…」
「そうです。してみせます」
「…だけどそんなこと、俺にはどうでもいいんだよ」
「は?何を言っているんですか?」
跳ね上がる端正な眉。
…清潔な正義感に満ちた若者…。
けれど、少しも羨ましいとは思わなかった。
暗鬱な雲が晴れたかのように、迷いが失せていた。
胸にあるのは、暁蕾への熱い想いだけだ。

わざと露悪的ににやりと笑う。
「俺が暁蕾を愛しているんだよ。
暁蕾が俺とじゃ幸せになれなかろうが、知ったこっちゃない」
雨航の貌に怒りが露わになる。
「ターレン!」
「俺は自分勝手で往生際が悪い男なんだよ。
それから、ゲスな性格は直らない。
生憎だったな、好青年」

驚きのあまり声も出ない雨航の胸ぐらを強く掴む。
「暁蕾はどこだ?」


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