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蘇州の夜啼鳥
第2章 かりそめの恋
ボコボコの殴り合いになりながら、必死で雨航から聞き出した暁蕾の居場所に片岡はタクシーで向かう。
唇の端が切れ、くしゃくしゃのジャケットを身に付けた片岡に、中年のタクシードライバーが眼を丸くした。
「喧嘩かい?ターレン」
「ああ、喧嘩だ。
…何十年ぶりかなあ…。
すっかり腕が鈍っていたよ…」
血が滲む唇をハンカチで抑える。
鉄の味と痛みに思わず貌を歪める。
…あの若造、本気で殴りやがって…。
俺は加減してやったのに…。
「コレかい?ターレン」
ハンドルを握りながら、ドライバーが小指を立てた。
「そうだ。女の取り合いでね。
…ちきしょう。
何が俺が幸せにしますだ。ケツの青いガキが偉そうに…。
百年早いわ」
愚痴る片岡にドライバーが眼を輝かせた。
「ターレン、あんた若者に勝ったのかい?」
「勝ったさ。オヤジの底力を見せつけてやったよ」
…結構ギリだったがな…と、心の中で苦々しく呟く。
…だからさ…。
と、片岡は痛む身体を前のめりに乗り出し、ドライバーに告げる。
「急いでくれないか。
彼女を取り戻しに行きたいんだ」
「任せときな!ターレン!」
人の良さげなタクシードライバーは、満面の笑みで請け負ったのだった。
唇の端が切れ、くしゃくしゃのジャケットを身に付けた片岡に、中年のタクシードライバーが眼を丸くした。
「喧嘩かい?ターレン」
「ああ、喧嘩だ。
…何十年ぶりかなあ…。
すっかり腕が鈍っていたよ…」
血が滲む唇をハンカチで抑える。
鉄の味と痛みに思わず貌を歪める。
…あの若造、本気で殴りやがって…。
俺は加減してやったのに…。
「コレかい?ターレン」
ハンドルを握りながら、ドライバーが小指を立てた。
「そうだ。女の取り合いでね。
…ちきしょう。
何が俺が幸せにしますだ。ケツの青いガキが偉そうに…。
百年早いわ」
愚痴る片岡にドライバーが眼を輝かせた。
「ターレン、あんた若者に勝ったのかい?」
「勝ったさ。オヤジの底力を見せつけてやったよ」
…結構ギリだったがな…と、心の中で苦々しく呟く。
…だからさ…。
と、片岡は痛む身体を前のめりに乗り出し、ドライバーに告げる。
「急いでくれないか。
彼女を取り戻しに行きたいんだ」
「任せときな!ターレン!」
人の良さげなタクシードライバーは、満面の笑みで請け負ったのだった。