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蘇州の夜啼鳥
第2章 かりそめの恋
ことの成り行きを見守っていた欧米人の観光客らがざわざわと騒めき始めた。
…言葉は分からずとも、中国人の美人ガイドといきなり現れた日本人の中年男が日本語でやり合い始めたのだ。
彼らがその只ならぬ様子に興味を持つのは当然のことだった。
「…結婚してくれ。シャオレイ。
君のためには俺がさっさといなくなるほうがいいと分かっている。
そうしようと思った。
でもできなかった。
君が好きだ。愛している。
君なしの人生が、俺にはもう想像もできないんだ…!」
…煌めくような眩しい春の喜びと幸せを知ってしまったから…もう元には戻れない。
「君を幸せにできるかどうか分からない。
…俺はもう四十六だ。
君の若さと人生を俺に消費させるのは忍びない。
充分分かっている。
けれど、それでも…そばにいて欲しいんだ!」
片岡をその美しい瞳で瞬きもせずに見上げていた暁蕾は、きっと薄桃色の唇を引き結んだ。
それから、おもむろに口を開いた。
「…嫌だわ」
「え⁈」
思わず間抜けな声が出た。
…え?今、なんて言った?
嫌?嫌って言ったよな?
空耳じゃないよな?
鳩が豆鉄砲を食ったような表情をする片岡を、暁蕾は尚も睨みつけ叫んだ。
「そうよ!嫌だって言ったのよ!」
…言葉は分からずとも、中国人の美人ガイドといきなり現れた日本人の中年男が日本語でやり合い始めたのだ。
彼らがその只ならぬ様子に興味を持つのは当然のことだった。
「…結婚してくれ。シャオレイ。
君のためには俺がさっさといなくなるほうがいいと分かっている。
そうしようと思った。
でもできなかった。
君が好きだ。愛している。
君なしの人生が、俺にはもう想像もできないんだ…!」
…煌めくような眩しい春の喜びと幸せを知ってしまったから…もう元には戻れない。
「君を幸せにできるかどうか分からない。
…俺はもう四十六だ。
君の若さと人生を俺に消費させるのは忍びない。
充分分かっている。
けれど、それでも…そばにいて欲しいんだ!」
片岡をその美しい瞳で瞬きもせずに見上げていた暁蕾は、きっと薄桃色の唇を引き結んだ。
それから、おもむろに口を開いた。
「…嫌だわ」
「え⁈」
思わず間抜けな声が出た。
…え?今、なんて言った?
嫌?嫌って言ったよな?
空耳じゃないよな?
鳩が豆鉄砲を食ったような表情をする片岡を、暁蕾は尚も睨みつけ叫んだ。
「そうよ!嫌だって言ったのよ!」