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蘇州の夜啼鳥
第2章 かりそめの恋
「…い、嫌…?
嫌なのか…?」
へなへなと力が抜け、その場に座り込みそうになる自分を片岡は必死で堪えた。

…そうか…。
そうだったのか…。
暁蕾は、もうとっくに俺を好きではなかったのか…。
想定外の現実を突きつけられ、片岡は衝撃に打ちひしがれた。

「…そうか…。もう俺のことは嫌いになったのか…。
そりゃ、そうだよな…。
俺は女にだらしないし、色々な過去がある…。
傲慢で卑劣だった。
清潔で綺麗な君に相応しい男じゃない…」
我ながら弱々しい声が唇から漏れる。
…当然といえば当然だ。
俺は碌な男ではない。
思い出すのは苦い記憶ばかりだ。
…妻に刃傷沙汰を起こさせ、最愛のひとを傷付け、傷心させた。
俺が関わる間に、二人とも幸せにはできなかった。

あまつさえ、まだ若い暁蕾のことも哀しませた。
愛されていると思ったのは、思い上がりだったのだ。

肩を落とす片岡に、暁蕾は激しく地団駄を踏み出した。
「貴方、全然分かってない!
私が気にしているのはそんなことじゃない!
私が嫌なのは!貴方が私を澄佳さんの身代わりとして好きになったことよ!
私が澄佳さんに似ていなかったら、貴方は私を好きになってはくれなかったんでしょ⁈」





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