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お園さん
第2章 出会い

バスに乗るまでは、ほんの1、2分だったが、一つの傘に身を寄せた、この時間は本当に〝天にも昇る気持ち〟だった。

バスを降りた時、お園さんは「ありがとう」と小さく会釈して家の中に入っていった。

翌日、顔を合わせた時、お園さんから「昨日はどうもありがとう」と言われた私は、「高校1年の山中(やまなか)雄一(ゆういち)です」と自己紹介した。すると、彼女は「へえ、高校1年生なの。しっかり勉強して立派な大人になってね」と励してくれ、「飯田(いいだ)園子(そのこ)です」と名前も教えてくれた。

それからというもの、学校の行き帰りに顔を合せれば、「おはよう」とか「さよなら」とか、短い挨拶を交わすようになった。

最初、彼女は私のことを名字で「山中(やまなか)君」と呼んでいたが、親しくなるにつれ、「雄一(ゆういち)君」と名前で呼んでくれるようになったが、私は「園子さん」なんて言えない。しかし、クラスの者は勿論、学校中を探したって、彼女と話ができるのは僕だけ、そんな思いがあったから、「飯田さん」で十分だった。

翌年1月、初登校の時、彼女が門のところに立っていたので、つい嬉しくなって、立ち止まって、「明けましておめでとうございます」と挨拶したが、それを同級生に見られてしまった。

学校に着くと、その同級生が「山中、知り合いなのかよ?」と聞いてきたので、「あ、いや、別に」と惚けたが、「だって、お前、挨拶してたじゃないか」と詰められてしまった。心の中では「へへへ、そうなんだよ」と自慢したかった。

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