この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
お園さん
第3章 些細な諍いから
だが、裏切られたと思い込んでいた私は、「男が来ていたじゃないか。見たんだよ、僕は」と余計なことを言ってしまった。すると、彼女の顔色がさぁーと変わった。そして、「な、何を言っているのよ」と聞き返す彼女の頬はピクピクと引き攣っていた。
(あ、いけない、これはまずい……)
私はそう感じたが、その場の勢いで「飯田さんはあんな男が好きなんですか。渋い男ですよね」と憎まれ口を叩いてしまった。その瞬間、パーン!と彼女の右手が私の頬を叩いていた。
「痛っ……」
私は頬を押さえていたが、「何だ?けんかか?」などと遠巻きにしながら、見つめる他人の視線に気がついたお園さんが「ちょっと来なさい」と私の腕を掴んで、家の中に引き込んだ。