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お園さん
第3章 些細な諍いから
私はお園さんが嫌いになったのではない。白髪の男性に取られたのが悔しくて、彼女に自分の方を向いて欲しいがために、わざと無視するような態度を取ってだけだった。それが……向けるところがなかった苛立ちから、私は学校に向かう途中、家の前で「おはよう」と声を掛けてくれたお園さんに「不潔だ!」と、とんでもない言葉を返してしまった。
「ちょっと、雄一君、何よ、その言い方は」
ここ数日の私の態度に思うところがあったのだろう。お園さんは不愉快さを隠さず、少し強い口調でそう呼び止めていたが、私は後ろを振り返らなかった。
しかし、下校時、待ち構えていたお園さんに「朝の態度は何なのよ?」と腕を掴まれてしまった。顔を見ると、見たことも無い怖い顔をしている。
こんな時は素直に謝ればいいものだが、私は「うるさいな」と、そっぽを向いて不貞腐れていた。
そこに、後から来た同級生たちが通り抜けて行くが、「何をやっているんだよ、山中」と声を掛けていく者もいた。
私は面倒くさくなって、「離してよ。他人に見られるじゃないか」と彼女の腕を振り切ろうとしたが、逆に「いい加減にしなさい。そっぽばかり向いて。気に入らないことがあるなら、ちゃんと言ってよ」と叱られた。