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喪服奴隷・七菜~香織の巻~
第15章 二兎を追う
『結婚?わたしと社長が?・・・本当にそれでいいんですか?
堕ろせ、とか言わないんですか?』
目に涙が滲んでくる。
隣の七菜も『良かったね、香織。
子供ができたんなら、きちんと籍を入れたほうがいいと思うわ。
省吾さんとは年が離れているから、香織が否なら仕方ないけど』
心の底から喜んでいるように感じられた。
二人の反応を見ていたら、思わず涙がポロポロこぼれてくる。

結婚?結婚かぁ・・・なんか実感が湧かないや。
堕ろすとなったら
せっかく生を受けた我が子の命を奪うことになるわけだから
あとあと、ずっと後悔するんだろうなぁ。
そりゃぁ、子供を授かったんならそのまま産みたい。
でも社長が、私みたいな小娘を奥さんにしちゃっていいの?
ただの遊び相手のつもりじゃなかったの?

その時香織の肩が、がしっと掴まれた。
「香織、俺が結婚相手じゃ不満か?」
省吾が両手で香織の肩を掴んだまま、熱いまなざしを向けてくる。
香織は涙が溢れて、何も答えることができなくなった。
そのまま机の上に泣き伏すと、声を上げて泣きじゃくりはじめる。
七菜が立って、香織の横に移動して肩を抱く。
『香織はどうしたいの?あなたの気持ちが一番優先されるべきなのよ。
あなたの気持ちを聞かせてちょうだい』優しく問いかけてくれる。
感情が高ぶって、頭の整理もできない香織はひたすら泣いている。
それでもようやく顔を上げて、鼻水でくしゃくしゃになりながら
『しゃちょー、ホントにこんな私と結婚してもいいんれすか』
半分呂律が回らなくなって、それでも省吾を見つめてきた。
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