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恋に落ちる時
第2章 フットサルの彼 -2-
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この歳になって初めて、一目惚れってあるんだって思った。
あれは、ちょうど3ヵ月前位だろうか。
その日は、前をいく電車で車両故障があって、乗りこんですぐの電車が駅間での停車を余儀なくされていた。運よくドア横を確保出来ていた俺は壁に寄り掛かりながら、動きが再開するのを待つ。
「あの…。」
控え目な声が聞こえる。ふと声の方へ顔を向けると、俺の隣でポールにもたれ掛かる女性に話しかける彼女が目に留まった。
「体調悪そうですが、大丈夫ですか?」
「…貧血になっちゃって。」
「ここ座って下さい。立ってるよりは楽だと思うんで。」
そう優しく微笑んで、席を譲り、俺の隣に立つ。
まだいつ動くかもわからない電車、せっかく座れている席を何一つ嫌な顔せず、当たり前のように譲る。その行為はごくごく普通のものかもしれないけど、朝のラッシュ+車両故障ともあって殺伐とした雰囲気の電車の中で、柔らかい空気を放つ彼女の姿はとても魅力的に映った。